新型コロナウイルス感染症の拡大するなかで、今年もスギ花粉の季節がやってきます。人前でくしゃみや鼻をかむことを避けなければならない状況ですので、例年よりしっかりと症状を抑える必要があります。
宮城県は昨年が少量飛散(東北大学観測:1682個)でしたので、スギの樹勢を考えると今年は平年以上の飛散数(5,000~6,000個)が予想されます。
県内の1月の最高気温が低いため、飛散開始は昨年より遅く3月初旬が予想されます。飛散すると間もなく大量飛散日を迎えますので、初期療法とそれに続く維持療法で確実に治療しましょう。
スギ花粉症の三大症状はくしゃみ、鼻水、鼻づまりとですが、さらに目のかゆみ、皮膚症状、そして睡眠障害、倦怠感、集中力低下がみられます。まず花粉を体内に入れないために、セルフケアが大切です。
コロナウイルスの感染対策で骨身にしみているところですが、3密回避とは異なる屋外の行動に意識をおいたセルフケア(マスク、ゴーグル、スベスベした上着、花粉付着防止スプレー、うがい・手洗い)、こまめな花粉情報のキャッチなどに取り組みましょう。
治療薬は飛散が始まる前にクリニックで処方してもらい、服薬始時期は主治医の指示に従うと良いでしょう。なお、治療により花粉症の鼻づまりが改善しても嗅覚障害が続く場合は、コロナウイルス感染の可能性があるのでご注意ください。
スギ花粉症の治療にはガイドラインがあります。経口薬、点鼻薬、手術療法、免疫療法、抗体製剤などを重症度や既存治療への効果をみながら、ステップアップしたり併用したりして用います。
この中で近年導入された舌下免疫療法の治療経験が蓄積され、1年目のシーズンから約7割の患者さんに有効であることがわかりました。また、副作用は軽度の症状が若干みられる程度で、治療中止に至る重篤な副作用は報告されていません。
残念ながら、季節中には開始できない治療法なので、重症の患者さんは季節後に検討してみてはどうでしょう。では、季節中すぐに効果の上がる治療法は他にあるでしょうか。それが昨年より保険適応になった抗体製剤です。
スギ花粉症はIgE抗体を介する典型的なⅠ型アレルギー疾患であり、このIgE抗体に対する抗体製剤が今までの治療で満足できなかった方への選択肢として登場しました。まだ高価な治療法ですが、薬価改定により昨年と比べて自己負担額が4割ほど下がりました。
人前でのくしゃみや鼻水は避けたい最重症の患者さんにはぜひ試してもらいたい治療法です。興味のある方はまずかかりつけの耳鼻咽喉科専門医にご相談ください。